ファミコン時代のホラーゲームには、現代のリアルな3Dグラフィックとは一味違う、独特の「怖さ」がありますよね。
使える色や音が限られているからこそ、闇の黒さが際立ち、粗いドット絵が逆にプレイヤーの想像力を掻き立てます。「見えないからこそ怖い」「音が不気味」といった8ビット機ならではの演出は、当時の子供たちに強烈なトラウマを植え付けました。また、セーブ機能がなかったり、難易度が理不尽に高かったりすることも、「死ぬことへの恐怖」をリアルに感じさせる要因だったのかもしれません。
今回は、そんなファミコンのホラーゲームたちを、発売日順に一挙ご紹介します。懐かしの名作から、知る人ぞ知る怪作まで、その歴史を辿ってみましょう。
1985年
ポートピア連続殺人事件(1985年11月29日/エニックス)
ジャンルは推理アドベンチャーですが、多くのプレイヤーが「ホラー」として記憶している作品です。特に地下迷宮の不気味な雰囲気や、犯人が明かされるクライマックスの演出は、当時の子供たちを震え上がらせました。コマンド選択式ゲームの草分け的存在でありながら、ドラマチックな展開と恐怖演出が見事に融合しており、今なお語り継がれる伝説的なタイトルです。
1986年
ゲゲゲの鬼太郎 妖怪大魔境(1986年4月17日/バンダイ)
国民的アニメのゲーム化ですが、その難易度の高さで知られるアクションゲームです。鬼太郎が髪の毛針や下駄を駆使して妖怪たちと戦います。不気味な敵キャラクターや、独特の浮遊感ある操作性が特徴で、当時の子供たちにとっては「妖怪の怖さ」よりも「クリアできない怖さ」の方が印象に残っているかもしれません。
魔界村(1986年6月13日/カプコン)
「死にゲー」の代名詞とも言える超高難易度アクションです。墓場や魔界を舞台に、ゾンビや悪魔が次々と襲いかかってきます。主人公アーサーは鎧が一回脱げるとパンツ一丁になってしまうというコミカルさもありますが、敵の配置やトラップは極悪そのもの。その理不尽なまでの難しさが、魔界を彷徨う孤独と緊張感を見事に演出しています。
メトロイド(1986年8月6日/任天堂)
SFアクションの名作ですが、その根底には映画『エイリアン』のような孤独な恐怖があります。広大で迷路のような惑星ゼーベスを探索する不安感、不気味なクリーチャーのデザイン、そして不安を煽るようなBGM。これらが合わさり、未知の惑星にたった一人で放り出されたような没入感を生み出しています。
ゴーストバスターズ(1986年9月22日/徳間書店)
大ヒット映画のゲーム化作品です。ゴーストを捕獲して資金を稼ぎ、装備を強化していくシミュレーション要素を含んだアクションゲームですが、独自のゲームバランスとエンディングのシュールさで有名です。映画の明るい雰囲気とは裏腹に、どこか虚無感漂うゲーム内容は、ある意味でホラーと言えるかもしれません。
悪魔城ドラキュラ(1986年9月26日/コナミ)
ゴシックホラーアクションの金字塔です。ドラキュラ伯爵を倒すため、シモン・ベルモンドがムチを片手に悪魔城へ乗り込みます。フランケンシュタインや死神といった古典的なモンスターが登場し、重厚で美しいグラフィックとBGMが恐怖の世界観を完璧に構築しています。高い難易度も相まって、手に汗握る吸血鬼ハンター体験が味わえます。
1987年
妖怪倶楽部(1987年5月19日/ジャレコ)
妖怪を倒して進む横スクロールアクションです。日本古来の妖怪たちが多数登場し、おどろおどろしい雰囲気が漂います。経験値を溜めてレベルアップする要素があり、主人公が強くなっていく楽しさもありますが、ステージが進むにつれて敵の攻撃も激しくなり、妖怪退治の過酷さを思い知らされます。
ドクター・カオス 地獄の扉(1987年6月19日/ポニーキャニオン)
洋館を探索するアクションアドベンチャーです。「13日の金曜日」に似た探索システムを持ちますが、アクションパートの挙動や、ハエ男やゾンビといった敵キャラクターのデザインが独特の不気味さを放っています。謎解きも難解で、閉ざされた館の狂気を感じさせるカルト的な一作です。
ゾンビハンター(1987年7月3日/ハイスコアメディアワーク)
雑誌企画から生まれた異色のアクションRPGです。最大の特徴は「ロウソク」システムで、これを持っていないと敵がすべて黒いシルエットになり、名前も「ゾンビ」としか表示されなくなります。視界が奪われる恐怖をシステムに組み込んだ画期的なアイデアであり、独特の浮遊感ある操作性と相まって不思議なプレイ感を残します。
月風魔伝(1987年7月7日/コナミ)
地獄を舞台にした純和風のアクションRPGです。主人公の月風魔が、奪われた波動剣を取り戻すために魔物たちと戦います。3Dダンジョンや横スクロールアクションが組み合わさったシステムで、おどろおどろしくも美しい和風ホラーの世界観が見事に描かれています。BGMの評価も非常に高い作品です。
ドラキュラII 呪いの封印(1987年8月28日/コナミ)
悪魔城シリーズの第2作で、探索型アクションRPGへと進化しました。特筆すべきは「昼夜の変化」があり、夜になると敵が強くなり、町の人とも会話ができなくなる点です。このシステムが、夜の森を彷徨う孤独感と恐怖を強調しています。謎解きの難易度は非常に高いですが、独特の哀愁漂う雰囲気が魅力です。
デジタル・デビル物語 女神転生(1987年9月11日/ナムコ)
現代の東京を舞台に、コンピュータで悪魔を召喚するというサイバーパンクな設定のRPGです。3Dダンジョンの探索はマッピングなしでは迷うこと必至の難易度で、閉塞感と恐怖を煽ります。敵である悪魔を仲間にし、合体させて強化するという背徳的なシステムが、オカルトファンを熱狂させました。
キョンシーズ2(1987年9月25日/タイトー)
当時大ブームだったキョンシー映画のゲーム化第2弾です。アクションRPG形式で、子供たちがキョンシーと戦いながら冒険します。独特の動きで迫りくるキョンシーや、お札を使って封じるアクションなど、映画の世界観を再現しつつ、子供たちが夜の街を探索するドキドキ感が楽しめます。
妖怪屋敷(1987年10月23日/アイレム)
懐中電灯を手に、妖怪だらけの屋敷を探索するアクションゲームです。暗闇を照らしながら進む演出が雰囲気を出しており、提灯お化けや唐傘お化けといった日本の妖怪たちがコミカルかつ不気味に描かれています。アイレムらしい手堅いアクション性と、探索の面白さが詰まった良作です。
1988年
シュワルツェネッガー プレデター(1988年3月10日/パック・イン・ビデオ)
映画『シュワルツェネッガーのプレデター』を題材にしたアクションゲームです。ステージ構成が独特で、横スクロールのアクションと、シューティングのようなモードが切り替わります。プレデターの圧倒的な強さや、映画のサバイバル感をファミコンなりに表現しようとした意欲作です。
妖怪道中記(1988年6月24日/ナムコ)
地獄めぐりをテーマにしたアクションゲームです。主人公のたろすけが、閻魔大王の裁きを受けるために地獄を旅します。コミカルな絵柄ですが、地獄の描写や、プレイヤーの行いによって変化するエンディング(中には怖い結末も)など、ブラックユーモアと教訓が含まれた作品です。
マニアックマンション(1988年9月13日/ジャレコ)
アメリカのB級ホラー映画のノリで作られたアドベンチャーゲームです。マッドサイエンティストの館に侵入した若者たちを操作します。キャラクターを切り替えて謎を解くシステムや、ブラックな笑いが満載の死に様など、日本のゲームにはない独特のセンスが光るカルト的な人気作です。
霊幻道士(1988年9月16日/ポニーキャニオン)
キョンシー映画の元祖をゲーム化したアクションです。道士となってキョンシーを退治していきます。格闘アクションの要素が強く、技を駆使して敵を倒す爽快感がありますが、やはりキョンシー特有の不気味な動きや、囲まれた時の絶望感は健在です。
ディジャブ(1988年11月22日/ケムコ)
ケムコアドベンチャー三部作の第1弾。記憶喪失の男が、殺人事件の容疑を晴らすために奔走するハードボイルド・ミステリーです。ホラーではありませんが、薬が切れると倒れるシステムや、選択肢一つで即死するシビアさが、常に死と隣り合わせの緊張感を生んでいます。「ざんねん!!」なゲームオーバー画面もここから始まりました。
エイリアンシンドローム(1988年12月2日/サンソフト)
グロテスクな異星生物に占拠された宇宙船を舞台にしたアクションシューティングです。制限時間内に仲間を救出しなければならないというルールが、パニック映画のような焦燥感を生み出しています。壁や床に埋め込まれたような生体パーツのデザインなど、生理的な嫌悪感を誘うビジュアルが見事です。
1989年
ジーザス 恐怖のバイオ・モンスター(1989年3月17日/キングレコード)
宇宙ステーションを舞台にしたSFアドベンチャーの傑作です。映画『エイリアン』を彷彿とさせるストーリーで、未知の生物に襲われる乗組員たちの恐怖を描いています。すぎやまこういち氏による音楽と、アニメーションによる演出が素晴らしく、ファミコン屈指のドラマチックなホラー体験が味わえます。
シャドウゲイト(1989年3月31日/ケムコ)
「松明の火が消えると死ぬ」「自分に槍を使うと死ぬ」など、あらゆる行動が死に直結する伝説のアドベンチャーゲームです。冷たく静寂な古城の雰囲気と、美しいBGMが孤独感を煽ります。理不尽な死に様を楽しむ「死にゲー」として愛されていますが、夜中に一人で遊ぶと本当に怖い雰囲気を持っています。
ホーリー・ダイヴァー(1989年4月28日/アイレム)
ハードロックな世界観を持つ高難易度アクションゲームです。操作性や画面構成は『悪魔城ドラキュラ』に近いですが、難易度はさらに凶悪。オカルト的な魔法や魔物たちが登場し、ダークファンタジーとしての完成度は非常に高いです。海外のメタルバンドを元ネタにした設定などもマニア心をくすぐります。
ファミコン探偵倶楽部PartII うしろに立つ少女(1989年5月23日/任天堂)
学校の怪談と殺人事件を融合させた名作アドベンチャーです。「うしろの少女」という噂話に隠された悲しい真実と、徐々に迫りくる恐怖。特に終盤の演出は、ファミコンとは思えないほど恐ろしく、多くのプレイヤーにトラウマを与えました。シナリオ、演出、音楽のすべてが高水準でまとまっています。
スプラッターハウス わんぱくグラフィティ(1989年7月31日/ナムコ)
元は過激な残酷描写で有名なアーケードゲームですが、ファミコン版ではキャラクターを可愛らしくデフォルメし、コミカルなパロディホラーになりました。様々なホラー映画のオマージュが満載で、映画ファンなら思わずニヤリとしてしまう演出が楽しめます。アクションゲームとしての出来も良く、ホラー入門に最適です。
悪魔の招待状(1989年9月29日/ケムコ)
ケムコ三部作の完結編。現代の洋館に迷い込んだ主人公が、悪霊や怪物と遭遇します。宝石を拾うと呪われて死ぬタイムリミット要素があり、焦りを感じながらの探索となります。ポップなBGMと不気味な敵デザインのギャップ、そして相変わらずの即死トラップの多さが特徴です。
スウィートホーム(1989年12月15日/カプコン)
ファミコンホラーの最高傑作との呼び声高いRPGです。「死んだ仲間は生き返らない」というシステムが、館の探索に極限の緊張感をもたらします。屋敷に残されたメモから過去の悲劇を読み解く演出や、扉を開ける際の効果音など、後の『バイオハザード』に繋がる要素が満載。恐怖と感動が同居する名作です。
悪魔城伝説(1989年12月22日/コナミ)
ファミコン後期の作品らしく、特殊チップを搭載した豪華なサウンドとグラフィックが魅力です。プレイヤーはラルフ・ベルモンドとなり、仲間と共にドラキュラ討伐に向かいます。ルート分岐や仲間システムにより物語に深みが増し、シリーズの中でも特に評価の高い一本です。
1990年
デジタル・デビル物語 女神転生II(1990年4月6日/ナムコ)
核戦争によって荒廃した近未来の東京を舞台にしたRPGです。崩れ落ちた東京タワーや廃墟と化した街並みが、終末的な無常感を漂わせています。悪魔のデザインや合体システムはより洗練され、ダークで重厚なストーリーが展開されます。ファミコンRPGの到達点とも言える作品です。
【番外編】日本未発売の有名ホラー
エルム街の悪夢 (A Nightmare on Elm Street)
モンスターパーティ (Monster Party)
これらは海外(NES)でのみ発売されたタイトルですが、日本のレトロゲームファンの間でも有名です。『エルム街』は最大4人プレイが可能、『モンスターパーティ』は奇妙でシュールな世界観が特徴のカルト作です。もし見かけることがあれば、その異様な雰囲気をチェックしてみてください。
さいごに
いかがでしたでしょうか?
今のゲームにはない、想像力で補完する恐怖。久しぶりに押入れからファミコンを引っ張り出して、あるいは配信サービスなどで、これらの名作に触れてみてはいかがでしょうか。ただし、夜トイレに行けなくなっても責任は持てませんよ?

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